今年、5年目を迎える中学生カテゴリーの「東京ヴェルディ・バンバータU-15」
硬式野球(ボーイズリーグ)の方は早めに募集を開始し、既に定員近くまで確定しているようだが、中学軟式の方はこれから体験を募集。
大体いつも2、3ヶ月の間隔を開けて募集を開始する。
そもそも、なぜ「硬式」と「軟式」の2つを運営するのか?
その狙いや意味について今回は纏めておきたいと思う。
「減った減った」と言われる野球人口の中身とは?
中学カテゴリーにおいての野球人口はこの20年で半減したと言われてる。
しかし、中学硬式の人口は20%以上増加している。
つまり減ったのは中学軟式で、全体の野球人口の減少より「中学軟式」は急激に減っていることになる。
部活動の民営化の動き、クラブチーム化を相まって、「中学硬式野球」への寡占化が起こりつつある。
これが今の中学野球カテゴリーの状況だと言える。
バンバータは2017年に学童軟式野球チームを設立。この時に4年生から以下を募集した。
その1期生が中学生にに上がるタイミングの2020年に中学部を設立する構想は元々あった。
現・U-15硬式の監督である小原慶治はジュニアチームからの立ち上げに関わり、そのまま中学の指導者に上がることも同時に構想内であった。
小原と相談をし「中学は硬式で」との認識にずれはなかったが、「東京ヴェルディ」との提携により総合クラブの1チームとしてスタートすることや、チーム名をどうするか?などの課題があったため協会に相談に行ったところ、前述の「中学軟式」の現状を聞かされる。
「バンバータは中学軟式はやらないのか?むしろそっちもやったらどうだ?やってくれよ!」
「いやいや、流石に2つの運営は無理ですよ・・・」
しかし、我々は「軟式野球」の面白さを誰よりも理解しているチームであり、なんとかしたいとの思いはあったが、「やってみよう!」となったきっかけは「東京ヴェルディ」の育成システムを知ったことが大きい。
サッカーに学ぶ育成システム
サッカー界で東京ヴェルディの代名詞は「育成力」
「育成のヴェルディ」としてサッカー界では名高い評判と実績を併せ持つ。
男子と女子を合わせると日本代表選手を最多輩出しており、若い選手が飛び級でトップチームで活躍するのもヴェルディが多い。
ヴェルディの育成スタッフではよく「リミッター外す」というキーワードが飛び交う。
サッカーはジュニア、ジュニアユース、ユース、トップと同じ「東京ヴェルディ」のブランドで各カテゴリーが運営されるが、成長に合わせて飛び級をさせる。つまり成長の早い子は同年代で天狗になる前に上のカテゴリーに上げられ、常に自分のリミッターを外せる環境がある。
ちなみに最年少Jリーグ出場は15歳10ヶ月、この記録もヴェルディだ。
そして何より、一番大きい要因が、トップチームと同じグランドで練習環境があることだ。
伝統的に大人の選手は下のカテゴリーの選手たちとサッカーをしても一切の手抜きをしない。
「昔はラモスさんなんて子供とやってもボール触らせてくれなかった」との逸話もよく聞く話だ。
子供でもプロの本気のレベルを常に見て、体感できる環境がある。
一方、野球界は小学校、中学校、高校とそれぞれ完結型。
故に早熟の子が活躍しやすい環境になりやすく、飛び抜けて成長が早い子がエースで四番で大車輪という一方で、成長が遅い子が見劣りし成功体験を味合わいにくい環境を作り出してしまう。
また早熟の子は天狗になりやすく、親も飛び抜けた才能だと勘違いも生みだし、周囲が子供にプレッシャーをかけてしまい、見守る事を忘れ親の熱量が上回っているのも良く見るケースだ。
逆に成長が遅いだけなのに、野球センスがないと思い込み次のカテゴリーで野球を辞めてしまうケースも多く見受けられる。
ちなみに親の熱量と子供の成長は比例しない。むしろ逆に反比例するケースの方が多い。
軟式だからできる大人との本気の練習
硬式では大人の選手との本気の練習は危険が伴うが、軟式であれば危険性はあまりない。
また一般(A号)と中学(B号)を統一させたM号の登場も大人と中学を一緒にやれると思ったいいタイミングだった。
つまり「軟式野球」であればサッカーのヴェルディメソッドが生きるのでは?と考えたのだ。
大人のチームと中学軟式の合同練習では全て大人の基準で練習が進む。
大人の本気の声出し、本気のボール回し、子供目線に合わせた野球は一切しないのがポリシーで、最初の方は戸惑う選手もいるが徐々にスピード感には慣れてくる。
大人とのコミュニケーション力が自然に身につくのも高校進学を見据えても非常に良い環境だと思う。
高校で3年生の先輩を見ても一切ビビることはないだろう。大人とやってたわけだし(笑)
最上級生になって、パワーも出てくると大人のチームに混じって実践に出場させたりする。
中学軟式のメリット
U15がスタートした2020年と、前年の2019年に面白いニュースが飛び込んできた。
なんと、NPB開幕投手を務めた日本人投手全員が「中学軟式野球」出身だったこと。
◆2019年 NPB開幕投手(日本人11人)
広島:大瀬良大地(大村市立桜が原中)
ヤクルト:小川泰弘(田原市立赤羽根中)
巨人:菅野智之(相模原市立新町中)
DeNA:今永昇太(北九州市立永犬丸中)
中日:笠原祥太郎(新潟市立新津第二中)
西武:多和田真三郎(中城村立中城中)
ソフトバンク:千賀滉大(蒲郡市立中部中)
日本ハム:上沢直之(松戸市立第一中)
オリックス:山岡泰輔(広島市立瀬野川中)
ロッテ:石川歩(魚津市西部中)
楽天:岸孝之(仙台市立柳生中)
彼らの中で高校で目立った活躍をしたのは山岡投手(瀬戸内高校)くらいで、
その他の選手はほぼ無名。成長が遅かったのか?中学、高校とあまり酷使して事がその後に成長できた要因だったかもしれない。
中学においての軟式野球は、安全に成長レベルに合わせて楽しめる野球だともっと再評価されていいと思う。(全軟連も頑張ってくださいw)
野球は楽しくやりたい
U15軟式に入団してくる子の多くは「野球が好き」
でも、「厳しい指導は嫌」「野球にもやりたいことがある」「まだ成長が遅くて硬式はついていけない」
そして意外と多いのが「小学校のチームで野球が嫌いになった経験のある子」だ。
先日のブログにも書いたが、野球が必ずしも一番でなくて良い。
何より一生野球が好きでいて、一生何らかの形で野球に関わって欲しい。
野球の楽しさ、面白さ、その延長に「勝ちたい」という気持ちが自然に芽生えてくる。
現に「U15軟式」の子どもたちは卒業する頃に「野球を本気でやってみたい」と言い出す子が多い(笑)そこから高校でもやりたいと言い出すケースをよく見る。
そういう選択肢もあっていいんだと思う。
みんなが甲子園を目指すわけじゃない。ましてやプロになるわけじゃない。
硬式と軟式の両チームを運営することで、お互いのチームの役割をはっきりさせることで育成世代に関わるスタッフも日々勉強になることが多い。
一人でも多くの子が高校でも野球を楽しくやってくれること。
これが我々のミッションだと考えている。